知的財産法は、有体物ではなく、情報の利用行為を規制するものであるために、本来的に他者の自由を制約する性質を有しており、法と経済学が拠って立つところの効率性という尺度のみでは割り切れないところがある。知的財産法の理論を完成させるためには、他者の自由を制約する権利を正当化しうるとすればそれは何なのかという形で、正義論を導入させる必要がある。情報正義論という情報の利用行為特有の正義論を探求し、知的財産法の理論を完成させること、それが本研究の目的となる。 くわえて、社会文化にも関わる問題となっている知的コモンズの確保の問題と、国際的な条約交渉の焦点となっている遺伝資源、フォークロアなどの伝統的知識の保護の問題は、効率性以外の視点を前面に出さないとその解決が困難な喫緊の課題といえる。本研究は、これら各論の場面における検討の成果を総論にフィードバックさせることにより、理論に磨きをかけることも狙っている。
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