本研究は、知的財産権侵害に関する国境措置(以下「国境措置」という。)に関する法的問題を理論的に分析検討することを目的とするものである。具体的には、(1)我が国及び欧米等の主要国の国境措置の実態把握、(2)国境措置に関係する国際ルール(TRIPS協定、パリ条約等)の規律の分析・検討、(3)国境措置の手続き的側面に関係する国内法の分析を行ったうえで、(4)我が国としてのあるべき国境措置についての検討を行うことを目指した。 平成19年度においては、(1)18年度に引き続き、我が国及び主要諸国の国境措置の実態把握、国境措置に関する国際ルールの分析、国境措置の手続き的側面に関係する国内法の分析を行うとともに、(2)国境措置についての分析検討の前提として、知的財産権の国際的保護をめぐる動向を幅広く考察することも行った。その結果、国際的な知的財産制度について、南北対立の激化と多国間フレームワークによる制度構築の停滞(逆に少数国間による制度構築の進展)というマクロ的な動きの中で、国境措置について、先進国の主導による国境措置に係る条約(模倣品・海賊版拡散防止条約)が提案されるとともに、各国が国境措置に強化を進めているという状況を把握することができた。また、我が国の国境措置(水際措置)については、近年の制度改正により対象の拡大・取締体制の強化が進められているものの、国際ルール整合性及び当事者の手続的保障の観点から課題を抱えていることが明らかになった。
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