研究概要 |
初年度においては,スペイン,ポルトガルに対する2度の渡航調査を含む資料収集作業を通じて,南欧3カ国の民主化に関する研究状況および欧州化に関する研究状況の把握と整理,それらの資料に基づくる政府/政党関係の形成経路に関する分析枠組みの構築を中心に研究が進められた.分析予備作業は3篇の論文の形ですでに出版または発表されている.南欧3国の民主化と政党政治の変容を直接論じた研究は,2006年IPSA福岡大会の"Comparing Political Corruption and Clientelism"パネル用のフルペーパーとして提出された"Political Clientelism and Democratic Consolidation : Southern European Experiences"である.この論文では,南欧3国の民主化経路とクライエンテリズム型の政党=有権者関係の形成の関係が明らかにされた. また,もう1つの論文「デモクラシー「零時」の政治学-移行期正義と「第三の波」民主化-」では,政府/政党関係をやや離れ,またより広く民主化後の制度再構築という観点から,移行期正義の問題を論じた.さらにこの問題関心は,デモクラシーの質の議論に及び,派生的な業績ではあるが,第3の論文である小川有美編『ポスト代表制の比較政治』の1章「ローカル・ガヴァナンスとデモクラシーの「民主化」」につながった. さらに南欧諸国の民主化と欧州化の交錯に関する研究の一部は,19年度秋に出版予定されるEUIJヨーロッパ研究叢書第3巻の1章として入稿済みである.この論文では,政府/政党関係を媒介する枠組みとして,スペインの準連邦制的国家構造の形成に焦点を当てた.なお本論文は,実績報告書提出時点において未刊行であるので,研究成果一覧には挙げていない.
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