1.18世紀前半におけるフランス・ドイツ・イギリスのコスモポリタニズム思想について、今年度は、平成18年度におこなった「商業平和論」についての議論の総括をおこなう作業をおこなった。まず、モンテスキューの商業平和論・文明社会論を中心的に考察し、従来、文学的著作と見なされ必ずしも政治論としての研究がおこなわれてこなかった『ペルシア人の手紙』を集中的に分析し、その結果を論文にまとめた。次に、ムロンとアークによる、貴族の商業従事を認めるべきか否かの論争を、新たに、国際秩序論として見直すという作業をおこなった。また、18世紀後半のフィジオクラートの国際秩序論の重要性を発見した。二度にわたりフランスに資料調査のために滞在したが、これらの著述家たちの貴重書の閲覧をおこなうことができ、また、この分野で執筆された(未公刊の)博士論文をいくつか調査した。2.法(とりわけ国際法)や政治制度の整備によって、安定的な国際秩序を形成していこうという「法」による平和というアイデアにもとづく諸理論について前年度に引き続いて資料調査をおこなうとともに、集中的な考察をおこなった。った。サン・ピエール、ヴァッテル、カントについて、今年度は、グロティウス、プーフェンドルフ等、17世紀の自然法論者の議論との比較の作業を行い、彼らの議論の18世紀的な特質を解明した。、きわめて重要な論者の議論について討究を進めた。3.コスモポリタニズム思想の対極にあるパトリオティズム(愛国主義)の重要性を発見し、17世紀末からフランス革命期にいたるフランスの愛国心をめぐる諸議論について一定の見通しをつけた。特に、7年戦争という歴史的事件が果たした重要な役割についての認識を深めることができた。その成果は論文の形で公刊した。
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