この年度は、昨年度に引き続き文献資料を収集し、日本及び中国における資料調査を徒いながら、そこから得たデータを検討して、本研究の骨格を一部練り上げる作業を行った。その際、以下の問題意識を念頭に置きながら、原正市の中国における活動の全体像を可能な限り検証してみた。つまり具体的には、原は活動の過程において遭遇した困難、および共同作業を通じて相互理解を深めたといったことについて、焦点をあてた。 資料収集及び検討作業については、基本的に以下のことを行った。 第1、生前の原正市を知る関係者を訪ね歩き、彼らの記憶の中の原正市についてインタビューを行い、文字資料の不足を補った。とくに取材対象を、技術指導を受けた中国側の関係者に拡大した。そのためには、北京における現地調査に研究協力者の中北浩爾教授とあたり、それに加えて、研究代表者は河北省の石家荘市、湖南省の長沙市趨き、インタビューを行った。予算が不足したため、海外調査を予定していた研究分担者の石田憲教授は日本国内にとどまり、ヨーロッパの関係文献の検討に精力を注ぐことになった。 一昨年度と昨年度に集めたデータに基づいて、国際的な視野から原正市の残した日記の意味を検討した。またその作業のために、より広く関係する新聞雑誌の記事、文献を継続的に収集していく。例えば、はらの活動の中には、インド及びオーストラリアのことも登場してくるが、それの意味をよく理解できた。
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