本研究は、1997年に日韓両国を襲った深刻な金融危機への対応が両国で大きく異なった理由を明らかにすることによって、政党が経済政策を左右する重要な要素であることを主張し、金融政策決定過程に新しい視点を提示するものである。 1.韓国における金融ガバナンス改革に関する先行研究をリストアップし、入手した。金大中政権下での第1次金融改革と第2次金融改革については充実した研究が存在したため、今年度はその整理をおこなった。その結果、IMFによって提唱された金融改革がなされたという見解と、国内アクター(特に労組)の抵抗の結果改革が不十分なものに終わったとの見解があることが分かった。盧武鉉政権期については具体的なデータに基づいての見解が意外に乏しいことが分かった。 2.次に、公的資金投入の仕組み整備、タイミングおよび、健全性規制の枠組み整備等について調査した。その結果、韓国では日本に比べ金融機関の経営状態がきわめて劣悪であったため、政府の強制介入が可能になったことと、需要管理が適切になされたことが金融需要の縮小を日本のように呼ぶことにはならなかったことが分かった。 3.輪国における金融ガバナンス改革のプロセスシーキングをおこない、そのために新聞資料を中心に収集した。分析において焦点となるのは、主要アクターが、いかなる関心から政策形成および執行に参加し、あるいは計画の執行を阻害する活動をおこなったかである。順序は、(1)1997年の金融改革関連法案形成過程、(2)1998年の第1次構造調整、(3)2000年の第2次構造調整、である。アクターの分析については、大統領と官僚、労組の動きに焦点を置いた。より分析が困難な議会の分析については、前提作業として議員の選挙における振る舞いについて今年度は分析した。
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