研究概要 |
空港分の発着枠取引データ(September12,1994- July1,1999)を用いた回帰分析により、発着枠取引市場の競争性の検証を試みた。その結果、ケネディ空港とオヘアの3空港では、売買/貸借される発着枠の数と発着枠貸借期間のいずれも、関連会社間の取引におけるそれらが、ライバル会社間の取引におけるそれらよりも、統計的に有意に多いことが判明した。これに対して、しばしば新規参入者やGAOなどにより指摘されてきた「新規参入者」または「非大手」それ自体に対する取引上の差別の証拠は、統計的には認められなかった。これにより、空港発着枠配分への市場メカニズム導入は、発着枠保有航空会社によるライバル航空会社への差別的取引により、上手く機能しなかったことが明らかとなった。 本研究は、空港発着枠取引データを包括的に分析したものとして、現時点では、世界でほとんど唯一のものである。その研究成果は、国内外の学会(日本交通学会、Air Transport Research Society)で報告され、国内では査読付の学会誌(『交通学研究』)に掲載されている(国外のジャーナル(Transportation Researck Part B)でも現在、査読の第1段階を終え、修正作業中である)。また、研究内容が評価され、東京大学で2009年3月に開催された国際セミナーに、航空経済学の主導的な研究者の一人であるJan K. Brueckner(University of California,Irvine)とともに、招待講演者として招かれてもいる。 以上の理由により、本研究は、おおむね順調に進展し、価値ある研究成果を上げつつあると判断する。
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