多くの民主主義諸国では、市民の政治離れが進んでいる。そもそも有権者の主体的な参加が民主主義の前提となっており、政治参加の後退は制度そのものの危機である。にもかかわらず、その原因について必ずしも十分な解明が進んでいるとは言えない。ましてや、効果的な処方箋は提供されていない。本研究では、概念ツールとしての「政治参加忌避態度(政治に関わりたくないという意識)」と、分析ツールとしての「一般市民に対するオーラル・ヒストリー」を用いて、主に世論調査結果に依拠したこれまでの知見を再確認・再検討すると同時に、新しい展望を得ようとした。 そして、平成19年度には、複数の個人(一般市民)に対して聞き取り調査を実施した。その結果、(D「関わりたくない」という忌避態度・意識も、その「質」において個人差がきわめて大きい。(2)質問紙に対する回答において忌避態度が確認できる個人であっても、政治参加のモードによっては積極的である。(3)政治的な現象に対する認知は、その他の日常的な事象についての「理解」の仕方と相関が高く、個人内の整合性は高い。(4)政治的信頼・忌避態度などの測度として、世論調査で一般的に用いられている質問文についても、上記(1)・(3)などを考慮に入れ、その妥当性についてさらなる検討が必要であることなどが判明した。
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