平成18年度は、規制国家に関わる諸先行研究の掌握のために、図書の調達や読書に努めた。その結果、規制に関する学問としては、筆者の専攻の政治学だけでなく、法学、経済学、経営学その他の諸分野において、様々な研究がなされていることが分かった。 しかし、とりわけ日本においては、いずれの分野においても未だ十分な研究がなされておらず、18年7月に福岡で行われた世界政治学会においては、分科会に置いて各国の研究者から報告があったが、日本からはなく、また実際、日本の論壇においても、依然として民営化=規制緩和というヨーロッパにおける80年代的発想から抜け切れていないことがわかった。ただ、世界的な規制国家の議論においても、その新しい傾向については未だ十分な整理がなされているとはいえない。単に旧来の規制の拡大を規制国家といっている論者もいるが、筆者の注目しているのは、イギリスなどで顕著となっている。民営化の中で行われる規制の豊富化である。 また、3月には、イギリスのロンドンにおいて、National Housing Federationを訪ねて、聞き取り調査及び文献検索を行った。National Housing Federationは、イギリスにおけるヴォランタリー・セクター(NPO)の全国団体で、政府からの規制と以下に向き合うかについても、近年大きな議論となってきている。本年度は、それらに関する文献取得や聞き取りを行った。収集した文献については、膨大であるので、今日までまだ読書が続いているが、聞き取り調査においては、National Housing Federationと他団体との関係、などについて多くの情報をえることができた。
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