規制緩和の一貫であると考えられてきた民営化・市場化であるが、先行的にそうした政策を実施してきた英国では、民営化・市場化政策を使って、ターゲットを達成するという意味での規制が発達しつつある。また、こうした現象を再規制(re-regulation)と描く考え方もある。 その一環として、とくに規制化と市場化の融合としては、ブレア政権の教育政策分野が挙げられる。ブレア政権では、各ステージごとにターゲットを設け、その達成度を教育基準局と言う独立の機関が評価すると言う形での「規制化」と、公立学校に自由度を拡大し、資産処分権限などを与え、入試を一定程度柔軟化するという法人化をすすめている。この後者の法人化とは、一種の「市場化」と捉えられる。 日本でも「学力テスト」や「学校選択制」を通じて導入が検討されている「市場化」政策を念頭に置きながら、イギリスの教育政策を検討すると言う段階に現在来ている。研究成果においては、イギリスブレア政権の、とくに中等教育政策において11歳選抜に関する変遷の中で、教育の中での公正さ、貧しい家庭の子どもたちにも門戸を広げつつ、多様性の中で優秀な生徒の可能性も引き出すために、「選択」の機会を広げようとする政策を検討した。ブレア政権では、そうした「選択」政策が、豊かな家庭の子どもたちだけの「選択」にならないように、一方で規制を強めてきていたことも明らかにした。
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