研究概要 |
本研究は中東欧諸国,特に2004年に新たにEUに加盟したチェコ,ハンガリー,ポーランド,スロヴァキアを主たる対象として,これらの諸国のEU加盟前後における政策,およびその背景となる政治制度,並びに政党政治の変化について,社会政策(社会保障、社会扶助政策,地域政策)と環境政策を事例として分析することを目的とする3年間のプロジェクトで,2007年は2年目に相当する。この期間においては,以下の3つの領域に関する作業を実施した。 1)社会政策に関する基本的な資料収集と情報の整理-今年度はひとまずポーランドにおける社会福祉制度の概要を整理し,近年ポーランドでは福祉の市場化が進んでいることを明らかにした。この成果は資料集である「世界の社会福祉年鑑」に掲載されている。他の諸国の事例についても作業を進めている。 2)地域政策に関する現状分析-今年度はひとまずポーランド西部国境領域における地域協力と地域社会の変容についての調査を行ったが,このドイツ、ポーランド国境における地域協力はある程度進展はしているものの,その協力は必ずしも地域社会のあり方を変えるレベルにまでは至っていないことを明らかにした。この成果は「地域のヨーロッパ」の一章としてすでに公表済みである。 3)多様な政策の背景の分析-この領域については,以前から調査、研究を進めていた上の4カ国に加えて,回時期にEUに加盟したバルト3国およびスロヴェニアにおける,社会保障や社会扶助政策の形成に影響を与える可能性が高い政労便の社会協議システム,特にその協議の実際の機能に関する相違の分析を行い,この領域に関しては過去の制度的遺産よりも政治過程,特に各国の政党政治が重要な作用を果たしていることを明らかにした。この成果は「大原社会問題研究所雑誌」に掲載の予定である。
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