欧州憲法条約に新たに、3つの結束の1つとして「領域的結束(territorial cohesion)」が盛り込まれ、これまでEU地域政策分野で策定されてきた地域作りの青写真"グランドデザイン(地域計画)"がさらに重要性を増してきた。本研究では、これらのグランドデザインが、EU地域政策分野で、領域的結束を高める重要な役割を担っていることを検証する。EUの下位地域にあたる5つのサブリージョン(大西洋沿岸地域・北海沿岸地域・バルト海沿岸地域・CADSES地域・北西メトロポリタン地域)で策定されてきた"グランドデザイン"事例を比較分析し、これらのサブリージョンが、可視的な国境そのものの相対化に加え、「政策国境」を低くしていく「新たな政策容器」として有効であり、非国家行為体までもガバナンスに巻き込んだ統合深化のツールとして有効であることを検証する。 平成18年度は、6月にイギリス・スコットランドで開催された北海地域委員会(NSC)年次総会に出席し、領域的結束に関するインタビュー調査・一次資料収集を行った。さらに、領域的結束に関する理論分析を、機能主義・新機能主義の観点から整理し、論文として発表した。その成果は、柑本英雄共編著『サブリージョンから読み解くEU・東アジア共同体-欧州北海地域と北東アジアの越境広域グランドデザイン比較』(弘前大学出版会、2006年)、柑本英雄共著、池田雅之・古賀勝次郎編著『比較文化の可能性-日本近代化論への学際的アプローチ』(成文堂、2007年)として出版された。
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