本研究最終年度である当該年度は、EU地域政策INTERREGIVにおける各サブリージョン間の連携について調査することを目的として、6月にデンマーク・ヘルニングで開催されたEU北海地域委員会(NSC)・バルト海地域委員会(BSC)合同年次総会に出席した。ここでの討議および関係者へのインタビュー調査の結果、サブリージョン同士が共同作業に入っていく、つまり、非相互排他性を更に確信的に高めていくステージにあることが明らかとなった。これまでそれぞれにグランドデザインを策定し、非国家行為体をもガバナンスに巻き込み、可視的な国境そのものを相対化する役割を果たしてきたサブリージョンが、「政策国境」を低くしていく「新たな政策容器」として有効であり、統合深化のツールとして有効であることが検証できた。 ウェストファリア的国家スケール中心の配列がもはや所与でなくなり、欧州CBC、 INTERREGなどの"ポスト国家スケール"の「空間処理の一般化」を念頭に置いた研究が進められなければならないことを本研究前年度調査で明らかにしたが、NSCとBSCが初めて合同で会議を開催したことは、これを明示的に意味している。 空間の垂直的・水平的・傾斜的リージョン間の動態的な関係に着目し、空間政策の観点から、これらサブリージョンが、EU地域政策分野で「領域的結束(Territorial Cohesion)」を高める重要な役割を担っていることが知見として得られた。
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