平成18年度の研究活動における主要な成果は、大統領府公文書の閲覧と、海外領ニュー・カレドニアの紛争調停過程を担当したクリスナハト氏との面談および研究への協力、当時の海外領土および大統領・首相担当ジャーナリストであるロラ氏とのインタビューの実現である。 1981-1985年におけるフランス南太平洋政策は、今日なお、あまり知られていない部分が多い。ニュー・カレドニア独立問題、ポリネシア自治要求問題ともに、政府が法案準備に入る前の、それぞれの政治団体との接触についてなど、新聞掲載事実より詳しい事情は、あまり知られていない。ひとつの理由には、植民地問題が60年の閲覧禁止状態に置かれていることと関係している。 本研究では、当初政府系公文書の閲覧を考えていたが、これら公開禁止文書のうち大統領府公文書について最初に閲覧許可をえることができたため、作業の順序を変えた。研究の作業としては、最初に、大統領公文書の閲覧による調査を集中的に行って概略を掴むことにし、現地調査および専門所管官庁の公文書閲覧を今年度以降へと変更した。 80年以降の文書は、例えば大統領公文書など閲覧許可が下りたものの、総じて、複写が禁じられている。これが、大きな二つ目の変更点である。写真、コピーといった複写が不可能であるものの、研究遂行にあたり、重要な役割を果たす資料の閲覧である為、予算の多くを海外調査と現地滞在(タイプ打ちによる複写)およびインタビューに費やした。 9月に閲覧が許可され以来、大統領府公文書閲覧を先にすすめながら、関係者へのインタビューを行ってきた。インタビューを通じて、とりわけ、クリスナハト氏をコーディネーターとして協力者に迎えることによって、当時の担当大臣への面会が実現するなど、本年度にその成果がつながるイニシアティブが得られた。 海外調査を見送ったものもある。ポリネシアは、今年早春の訪問を考えていたが、昨年11月に現地で政変があり、インタビューを予定していたテマル氏が大統領ではなくなった。6月の選挙までは、予定が立ちづらく、こちらの面会依頼など、他の行政担当者も含めて返事が来ていない。ポリネシア調査を選挙が済み次第具体化することは、本年度の重要な課題である。 本年秋には、学会報告を予定しており、大統領を中心にすすめられた交渉と調整について、これら平成18年度の成果を中心に整理をすませ、中間報告を実施したい。
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