平和構築支援における軍事組織と民間組織との民軍関係を考察する一環として、日本の自衛隊による平和構築支援という観点からアプローチし、とくに地雷処理の領域における活動実態を調査した。 対人地雷全面禁止条約に加入した日本は、現在は武器としての地雷は所有しないが、除去を含めた対処法については専門性を有している。他方、同条約が施行されたとはいえ世界各地の紛争地においては依然、大量の地雷が使用、放置され、紛争後の平和構築におけるSecurity sector reformとして地雷処理は重要、不可欠な課題の一つである。日本の自衛隊がこの分野で平和構築支援として実効的に関与できる余地があると考えられる。 しかし、現役の自衛官によるこの種の活動は法的な問題もあり、これまで実例がない。現在、実施されているのは退役した自衛官による活動である。退役自衛官らが中心になって発足したNPO法人、JMAS(日本地雷処理を支援する会)は、カンボジアにおいて地雷処理の支援活動を行っている。現地では、同会の一員で前二等陸佐の高山良二氏が現場でカンボジア人と共同しつつ、地雷除去の活動支援を行っているが、現地での聞き取り調査などの結果、いくつかの課題が抽出された。 最大の課題は、現役の自衛官による地雷除去活動を可能にするための政治的、法的な環境整備の問題である。JMASの高山氏による活動は有意義であるが、退役自衛官の私的なNGO活動であり限界がある。自衛隊による正規の活動として地雷除去活動を実施できれば、平和構築支援として相当程度の効果を期待できる。自衛隊のイラク派遣のような、日米同盟強化の観点から行う自衛隊派遣でなく、平和構築活動として国際社会の公益性の観点から行う自衛隊派遣という発想をまず理解、共有せねばならない。
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