近年ネパールでは政治の混迷が続いている。08年4月には制憲議会選挙があったが、混乱要因は山積している。このネパールの紛争・混乱に対して国連が政治ミッションUNMINを送り、平和構築の活動を進めている。日本政府は07年4月から自衛隊員6名をUNMINに派遣し、武器監視要員として活動させている。このネパールにおける平和構築支援に関して現地調査を行った。分析の視点は大きく2点:1点目はネパールの政治状況の分析、2点目はネパールにおける自衛隊の活動の分析である。 内戦から和平合意、選挙を経て新政権の発足-という平和構築の例はあちこちである。ネパールもそのプロセスに沿うものの、背景には根源的な難題がある。この国の王政は90年の民主化により揺らぎ始め、共和制勢力が伸長、国王側も対抗する中、王室内の内紛も激化した。反政府勢力には共産主義を掲げる一派もあり、とくにマオイストが96年から武装闘争を開始、06年の包括和平合意まで死者は約1万3000人を数えたという。他方、カーストや民族によって約60の集団があり、その中で抑圧、差別されてきた勢力が権利回復の運動を開始している。こうした民主化や人権保障の動きはそれ自体、肯定されるのだが、ネパールの不幸はその「時間」にある。ヨーロッパ先進国が2、300年かけて進めたことがネパールではわずか数十年で一気に変化。そのひずみがネパールの紛争や混乱を招いていると理解できよう。また自衛隊員はマオイストが武装解除した武器庫の監視を中心に、マオイストと政府間の停戦状況を維持するため非武装で活動している。数的には小規模であるが、資質の高さは評価されており、自衛隊のPKO活動の拡大、強化を図る上で有意義な前例となろう。
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