平和構築支援における民軍協力は日本の場合、自衛隊が当事者となるが、陸上自衛隊には2007年に国際活動教育隊が創設され、この組織で国連PKOや災害救援、邦人輸送、多国籍軍の活動などに関する研究、教育、訓練が行われている。民軍協力の問題は重視されており、NGOの代表らを講師として招き、現地における軍隊と民間組織との関係について議論はされているが、現状では一般論の域を出ず、理論・実践の両面で今後の発展的対応が望まれる。 他方、海外の軍事組織における民軍協力の取り組みは進んでおり、NATOでは独自の組織で研究・教育を行っている。オランダにあるCCOEはNATO加盟国の将兵を対象に研修コースを組んでいるが、実際にこのコースに参加してみて民軍協力に関して重要な知見が得られた。基本的な要点の一つは、軍事組織の側では、民間との連携・協力関係とは当該軍事組織のミッションを遂行するための軍事活動の一環として、とらえられているという点である。ミッションが民間組織・NGOと同一であれば連携・協力は双方の取って生産的であるが、そうでないならむしろ妨害的な意味も持ちうるのである。たとえば、NGOも軍隊も紛争地においてしばしば学校修復の支援活動に取り組むが、NGOは学校修復自体が「目的」であるのに対し、軍隊は「手段」として学校修復を行う場合がある。つまり学校を修復することで住民を味方に引き入れ、敵対者との戦闘行為を有利に運ぶという「目的」があるのである。こういう場合では民軍協力は支援活動にとって好ましくない状況になりうる。 しかし、治安が悪い地域では軍隊はNGOに対する防護の役割を果たす点を始め、民軍の協力関係が支援活動にプラスに働く場合もある。こうした功罪の側面は民軍協力の中核的な争点を形成している。
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