18年度は3年間の研究の初年度に当たり、先行研究に関する文献と関連情報の収集に努めた。先行研究については、広く平和構築活動一般についての文献と、主に非政府組織(NGO)が紛争後の復興において取り組んでいる事例についての文献を渉猟した。その理由として、紛争後の復興における二国間援助の場合と比較して、NGOによる活動の方が現地の状況を悪化させない、いわゆるDo No Harm原則に重点をおき、援助活動を通して平和の芽を育もうとする活動が多く見受けられるからである。 また、情報の収集として、まず5月に我が国の平和構築研究の第一人者が顔をそろえる平和構築フォーラムが主催するセミナーに参加し、情報交換を行った。そこにはNGOの代表だけでなく、外務省、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の代表も参加するなど、幅広く情報を集めることができた。次に、9月には外務省南東アジア第二課と国別開発協力第一課を訪れ、調査対象候補地である東ティモールの現状についてブリーフィングを受けた。また、同日、国際協力機構本部にて、アジア第二部大洋州チームの担当官にもお会いし、ブリーフィングを受けた。その結果、東ティモールの騒乱は、一部報道で言われているほど民族間の争いという様相が強いわけでないばかりか、開発援助が民族間格差を生み出して今回の騒乱につながったものではないことが確認できた。そのため、東ティモールを候補地とすることは保留せざるを得なくなった。さらに、今年になっても大統領選挙後の混乱に予断を許さないことから、19年度の現地調査に東ティモールを含めるかどうかは未定の状態である。以上が18年度の研究実績である。
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