本研究は、共産圏崩壊後の米国による輸出規制政策を切り口にして、東アジア(とくに中国)に焦点をあてて、「国家」と(情報技術革命がもたらす)「国家の変容」がどのように交錯しているのかについて分析するものである。輸出規制のなかでも、米国における「みなし輸出規制」に焦点をあてて研究した。ちなみに、「みなし輸出規制」とは、技術移転に関わるものであり、規制技術が規制対象国に移転され「輸出とみなされる」場合に適用される規制をさす。 みなし輸出規制をめぐっては、2005年から米国政府や産業界、学界を巻き込んだ論争が起きた。この論争では、(1)貿易に属する「ものの移動」、(2)移民研究に属する「人の移動」、(3)学生や研究者などの教育・研究の国際交流、(4)技術移転などの異分野が交錯している。これらの異分野を、「国家による規制」と情報技術革命という視点から分析し、そのことにより21世紀に入って急速に進みつつある「国家の変容」の解明をめざした。
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