ジュネーヴの国際連盟資料館にて資料収集をおこない、連盟情報局の内部文書、また同機関が発行したパンフレットなどを閲覧、複写した。資料収集によりわかったことは以下の点である。 1.連盟はかなり積極的に広報活動に乗り出していた。 2.連盟広報にかんする政策は、理事会や総会というレベルではなく、情報局内の数名の有能な職員による立案や遂行によるところが大きかった。 3.アメリカは国際連盟に未加盟であったが、情報局の資料を読む限りでは、アメリカと連盟の関係は弱いものではなかった。情報部にはアメリカ人の有力な職員がはたらき、また、アメリカ人個人篤志家からの資金援助も受けていた。さらに、連盟出版物をアメリカ人が買うことも多かった。 4.戦間期の国際主義の思潮を伝播する上で、情報局は中心的役割を果たした。 5.加盟国政府間のみならず、民間の平和運動団体や教育団体とも連携をとっており、これは連盟がトランスナショナルなネットワークを築いていたことを示す。 このような資料収集で得た情報をもとに、06年10月には、一橋大学COEプログラム招請により、戦間期の国際連盟秩序について報告をおこなった。また、その報告にもとついた原稿(分担執筆)「戦間期国際秩序における国際連盟、ヨーロッパとアメリカの交接」を『戦争の後に』(けい草書房より出版予定)に提出した。
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