プロジェクト最終年度の本年度は、前年度に引き続き、EUの持続性戦略を中心に取り上げ、そのソフト・ロー的要素の顕著なガバナンス様式の諸特徴と、そのソフト化がかえって中核政策概念の意味同定をめぐる言説を誘導していく様相について、検討を進めた。これが年度を通じて、3件の報告と1本の論文発表に結実した。まず4月に慶應大学ジャンモネEU研究センター主催の研究会で、EUの持続性戦略についてソフト・ガバナンスとデモクラシーの関連から特徴づける報告を行い、また5月には、東京大学社会科学研究所主催のワークショップで、EUの気候変動対策を事例にソフト化するEU環境ガバナンスの諸特徴を報告した。そして11月に、日本EU学会全国大会において、再度、EUの持続性戦略を取り上げ、その裁量調整方式(OMC)に類似した特徴と政策言説のあり方をコントロールする側面に光りを当てる報告を行った。こうした一連の報告の一部は、査読の結果『日本EU学会年報』第29号に掲載可となった論文にまとめてある(「EUの持続性戦略と欧州統合の行方」)。今後は最終の成果報告書の策定へ向け、EU環境政治をめぐるグリーン系党派連合の動きについてのフォローアップ調査を補足として加えた上で、言説連合の視点を統合して、EU環境ソフト・ローの意義について整理、単行本の出版を目指していく。
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