本研究の目的は漸進的な経済改革を「部分自由化」及び「部分民営化」をキーワードとして分析し、現実の日本及び中国などの移行国の諸改革を分析・評価する枠組みを構築することにある。 本年度はまず日本における規制改革の流れを「規制緩和」と「民営化」をキーワードにして80年代以降の改革の流れを概観し、規制改革と公共性の関連を分析した。この成果は、「規制緩和と民営化の経済分析」としてまとめた。 また、規制としてもっとも基本的な価格規制を取り上げ、既成産業における価格規制の設計が企業の投資行動に与える影響を分析した。その際、既成産業で重要な要素となる混雑の問題を取り上げ、差別化された財市場における混雑削減投資と価格規制の影響を分析し、次のような結果を得た。(1)価格規制のない自由市場では投資が過小になる。(2)価格規制を行うと、投資量は規制された価格の増加関数となる。(3)最適な投資をもたらす規制価格水準は、自由市場において付く均衡価格を下回る。結果(3)は結果(1)(2)を前提とすると意外な結果であるが、この意外な結果をもたらすメカニズムを明らかにした。この成果は、'Congestion-Reducing Investments and Economic Welfare in a Hotelling Model'としてEconomics Lettersに掲載された論文にまとめた。 研究開発に与える影響に関しては更に研究を進めており、そのための基礎的なモデル構築の準備作業を進めた、その成果の一部を「費用の不確実性と製品特性の関係」としてまとめた。
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