研究概要 |
本研究の目的は漸進的な経済改革を「部分自由化」及び「部分民営化」をキーワードとして分析し、現実の日本及び中国などの移行国の諸改革を分析・評価する枠組みを構築することにある。 本年度はまず日本における電力市場の自由化に関連して、自由化と電源ポートフォリオ選択及び環境問題との関連を分析した。この最初の成果を、 「電力自由化と電源構成」(社会科学研究,2009)として発表した。 また、部分自由化の制度設計で常に問題になるクリームスキミングと自由化市場の競争と市場設計に関する問題を分析した。その結果、自由参入市場で潜在的な競争者が多すぎると逆に参入障壁を強化してしまうことを明らかにした。この最初の成果を、「複数の潜在的参入企業によるクリームスキミング的行動が市場の競争性に及ぼす影響について」(社会科学研究,2009)として発表した。また関連して既存企業に関する新規参入者の情報収集の誘因と価格変動を分析し、その経済厚生上の意味を明らかにする論文として"Simultaneous Price Changes, Information Acquisition on Common Competitors, and Welfare"(Australian Economic Papers, 2008)を発表した。 更に寡占市場を分析するための基礎的な分析道具として立地モデルにおける混合戦略均衡の性質を明らかにした。この成果は"A Noncooperative Shipping Cournot Duopoly with Linear-Quadratic Transport Costs and Circular Space"(Japanese Economic Review,2008)及びCost Differentials and Mixed Strategy Equilibria in a Hotelling Mode1"(Annals of Regional Science, 2009)として発表された。
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