本年度は"The Saving Rate in Japan : Why it has fallen and why it will remain low"という人ロ統計の精緻なモデルを発展させた論文である。我々のモデルは歴史的データから貯蓄率の推移を再生し、未来の日本の貯蓄率を予測するというものである。先進6力国の中でも最も急速な人ロ統計上の変化を経験しているという意味において日本のケースは興味深い。モデルの予測は人口統計の変化は日本の貯蓄率を非常に低いままにするであろうと示唆している。たとえ我々が年3%の生産性向上を見込んだとしても、出生率の低下と高齢化の影響で純粋な個人貯蓄率は21世紀中には5%を越えないと予測される(因みに1990年頃まで日本の貯蓄率は15%であった)。この論文はInternational Economic Reviewに再掲載される。 次に財政政策的に日本の高齢化の影響を調査する新しいモデルを構築した。我々の新しいモデルは社会保障、医療費、国債、労働に関する税金、消費、資本所得を考慮している。我々はデータ構築を終え、すでに比較定常状態を算出するフォートランプログラムを手にした。準備段階で得た結果は、純債務GDPの率がGNPの75%という新しい定常状態と1990年代の状況を比較すると、公的年金は厳密な源泉課税方式でまかなう社会保障システムによって担われ、生産活動に占める医療費のシェアは90年代のレベルにとどまる、ということであった。もし現在の緊縮財政下の価値均衡が消費税の調整で保たれると仮定すれば、最後の定常状態下では消費税は5ポイント上昇して10%になる。厳密な源泉課税方式を行うことによって公的年金の給付は60%にまで下がる。これらの結果には3つの原因がある:それは長寿化、労働年齢に該当する個人の減少、そして国債に対する高い利息支払いである。
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