研究課題
本年度はロシア企業における組織的再編と人的資本形成を実証研究することを課題として、具体的には取りまとめの年度にあたり、世界金融・経済危機の企業への影響、人的資本形成における労働システムの特質、企業における人的資本形成の国際比較といった方向で研究を進めた。2009年春と秋に、ロシアで現地調査と聞き取りも実施している。まず、実証データにより、ロシア企業が世界経済危機の影響を受け深刻な危機に陥っているとともに、それに対して経済主体は人的資本形成を含めて危機打開の独自行動をとっていることを明らかにした。同時に、人的資本形成の最新局面を企業の社会的責任(CSR)の側面から実証研究し、政府の役割の大きさを明らかにした。両方の研究成果のうち、CSRはロシア高等経済大学の国際学会、韓国の東アジアスラブ東欧研究大会、ソウル大学などで報告し、経済危機はBeijin Forum(北京大学)をはじめ、ベトナム、KIER-UNCワークショップ、一橋大学国際会議などで報告した。さらに、本年度は、ロシア企業の動態をグローバル化との関係で検証するとともに、日本企業システムの変動を比較検討することにより、国際比較の視座を析出した。企業における動機付け、企業内の昇進と教育システムが危機下で、流動化していることをロシアと日本の比較から明らかにしている。本研究は、日本比較経営学会全国大会共通論題「グローバリゼーションの新段階と比較経営学の課題」で報告するとともに、ベトナム(招待報告)、KIER-UNCワークショップなどで報告している。本研究は比較経済学の研究視座を提起するものである。なお、すべての研究成果は研究論文、ディスカッションペーパーの形でも公表している。本年度は、研究の最終年度として、成果を国際学会で報告することに重点をおいた。市場移行下の企業システムの構造分析として世界的な研究の発展に貢献したと考える。
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比較企業研究 第34号
ページ: 20-41
Discussion paper, KIER Kyoto University No.680
ページ: 1-28
Discussion paper, KIER Kyoto University No.688
ページ: 1-33