18年度は、以下の2つの主題について研究を行った。 (1)世代重複経済における消費の外部性の効果 世代重複経済における消費の外部効果は、世代内の効果と世代間の効果に区分できる。2006年度の日本経済学会秋季大会における招待講演において報告した論文、"Growth and Bubbles with Consumption Externalities"では、世代間の消費の外部性の存在によって、世代重複経済の動学的ふるまいと均衡の効率性の性質が大きく左右される可能性があることを示した。これは、消費の外部効果が主として量的な効果にとどまる代表的家計経済における分析結果と対照的である。論文では、資産バブルが存在する場合についても論じ、世代間外部性の導入が既存のよく知られた結果を大きく変える可能性があることも明らかにした。また論文「成長・バブル・消費の外部性」では、これらの結果を要約すると共に、問題の背景や意味づけについて詳しく説明をした。 (2)独占的競争経済における外生的な消費の習慣形成 消費者の効用が、ある財の過去の社会的な平均的消費の加重和にも依存し、かつその財を独占的競争企業が生産しているとすると、企業は消費者の外生的習慣形成を考慮して価格付けを行う可能性がある。論文"Growth and Habit Formation : the Case of Endogenous Technical Change"では、このような仮定のもとで、財の種類の増大により内生的経済成長が実現するようなモデルを設定し、消費の外部効果が長期的な経済成長率と経済の運動経路に本質的な影響を及ぼしうることを確認した。なおこれらの結果をさらに詳細に分析した英文論文を作成し、海外の専門誌に投稿しており、現在レフェリーの指示に従い改訂中である。
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