平成19年度は、主に2つのテーマについて研究を行った。まず昨年に続き、世代重複経済における消費の外部性の働きを検討した。具体的には、2世代重複経済モデルに世代内と世代間の消費の外部効果を同時に導入し、外部性の存在が定常成長経路と移行過程における均衡動学に及ぼす効果について分析をした。その結果、特に世代間の外部効果の存在が、恒常成長経路の性質とモデルの動学的性質に対して大きな作用をすることを確認した。これは、代表的家計経済では、消費の外部性が一般にモデル分析の定性的な結果に対し本質的な効果をもたないことと対照的である。さらに、この基本モデルに貨幣を導入し、バブルを伴う恒常成長経路の性質を検討することによって、消費の外部性がバブルと成長の関係をどのように変化させるかを調べた。 第2に、R&Dによる財の種類の増大が経済成長の源泉となるような内生的成長モデルを設定し、これに外部的な消費の習慣形成(社会的な消費習慣が外部性として個人の効用に作用する状態)を導入した。この場合、外部効果の大きさと習慣形成のスピードが、恒常成長率と移行過程の安定性に直接効果を及ぼすだけではなく、企業の価格設定行動にも影響することによって、外部効果が存在しない通常の場合とは大きく異なる結果を生むことを示した。更に、R&D補助政策の効果や社会的最適な成長経路の性質についても、消費の外部性の存在の有無が重要な差異を生じさせる明らかにした。
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