研究概要 |
(1) 時間割引率の実証研究 書間・池田(2007)では、経済実験とアンケートを併用することによって、被験者の時間割引率が、金額や期間に関する異時点選択の条件や、被験者自身の人口統計的、経済的属性にどのようにいぞんするのかを統計的に明らかにし、さらに、推定された時間割引率が被験者の日常の食料消費行動や負債行動を有意に説明することを示した。とくに、双曲割引傾向が強い被験者ほど負債保有の確率が高くなることを示した出版論文は、これが初めてである。 (2) 上限金利規制の行動経済学的分析 筒井・大竹・書間・池田では、消費者金融の利用者を含む一般社会人を対象にインターネットを用いて行った大規模アンケートのデータを用い、消費者金融の利用者、多重債務者、それ以外の回答者で、選好や意思決定の傾向がどのように異なるかをとくに時間割引率と衝動性の観点から分析した。その結果、時間割引率が高いほど、双曲割引傾向が強いほど、また、衝動性が強いほど、消費者金融利用や多重債務の確率が高くなることが明らかになった。 (3) その他 時間選好率などの消費者の選好が、一見経済学と無関係な肥満や中毒などの日常的な問題を理解する上でどのように重要であるかを啓蒙的なエッセイにまとめ、それが、『こんなに使える経済学』(大竹文雄編、ちくま新書、2007年)所収の形で出版された。肥満の経済分析については、現在論文としてまとめつつあり、すでに一橋大学などでセミナーを行った(Ikeda, Khang, Ohtake,2008, Fat debtors: Time discounting, its anomalies, and body mass index.)。
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