研究概要 |
本年度は,夏季休暇中にミズーリ大学のホワイト教授とセントラルバンキングとフリーバンキング論争の諸問題についてミズーリ大学で意見交換し,またハーバード大学で資料収集をした。研究成果としては,「反通貨管理の思想-J.W.ギルバートとT.トゥック-」を『立教経済学研究』62:4に発表した。この論文は,1830年代の通貨管理の思想であるパーマー・ルールに対して批判的立場をとったフリーバンキング学派のギルバートとセントラルバンキング学派のトゥックを対置させ,トゥックのギルバート批判という形で当時の通貨論争の一端を浮き彫りにすることを意図している。ギルバートは研究史のうえでは,銀行学派に数えられてきたが,トゥックはギルバートの理論を特に「貨幣市場理論」と呼び,批判した。ギルバートは,パーマー・ルールが企図していたイングランド銀行による政府証券の売買による通貨の供給と収縮をたんなる物価の騰落ではなく,投機や外国の貨幣市場での証券の購入につながるということを指摘して批判したが,トゥックは,それは通貨と「処分するべき資本」との混同等を含んでいるとして,ギルバートの理論を批判した。この論文は,同名のタイトルで,2009年4月にニューヨークのコロンビア大学で開催されるペイパー・マニー・カンファレンスで報告される予定である。
|