研究概要 |
本研究の目的は,「リスクの経済学の成立と発展に関する思想的・学説史的研究」である。リスクの経済学の歴史を概観すると,有史以来1700年代頃に及ぶ「未明期」,1700年から1940年頃に至る長期の「始動期」,1940年代から1970年頃までの「発展期」,1970年頃から2000年頃までの「成熟期」,および2000年以降の「再生期」の五つの時代に区分可能であると考える。平成19年度においては,前年度の研究業績を踏まえつつ,特に「始動期」の後期以降や,「発展期」に活躍した学者たち(マーシャル,ナイト,ノイマン,ケインズ,シュンペーターなど)の思想と社会的背景を中心として、体系的・学際的な研究を行なうことが主要目的であった。 研究代表者は上記の目的に沿った研究実績を挙げるために,2007年度中を通じて,多数の学会、研究会に出席、報告するとともに,数多くの著作活動を行なうことができた。これを敷衍すると,まず学会、研究会活動については,2007年9月11日,中国の東北財経大学において,中国人の研究者を対象として「リスクの経済学-現状と課題」について招待講演を行なった。また,明治大学理工学部,京都産業大学,徳島大学などにおいて,「リスクの経済学の過去、現在、未来」などのタイトルで講演、報告を行なった。次に,著作、論文活動については,国際的一流学術雑誌(Journal of Risk Research)に投稿し、リスクの経済学に関する2本の英文論文(レフェリー付き)を公表することができた。また,岩波書店刊行の『リスク学シリーズ』の執筆依頼に応えて,その第1巻第1章「経済学におけるリスクとは」を執筆するなど,多数の論文実績を挙げることができた。 最後に,図書活動にっいてであるが,研究代表者は堀出一郎氏とともに共監訳者として,ジョン、サットン著『経済の法則とは何か-マーシャルと現代』(麗澤大学出版会)を刊行したことを報告しておきたい。
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