研究概要 |
「リスクと不確実性の経済学」が学問として市民権を得たのは比較的最近の1980年代のことであるが、その起源は非常に古く18世紀のアダム・スミスの時代まで遡ることが可能である。このような「古くて新しい学問」の成立と発展の歴史について、その背景となる社会基盤事情と関係づけて体系的に解明することは、非常に有意義な仕事であると思う。 本研究プロジェクトの実施期間は、平成18年度〜20年度の3年間である。平成20年度はその最終年度にあたり、リスクの経済学の「成熟期」や「再生期」に活躍している研究者たちの思想・学説と社会的背景を重点的に研究すると同時に、リスクの経済学の成立と発展の全ての時代を鳥瞰する体系的・学際的研究を総括すべく全力を傾注した。この点を敷衍すると、次のごとくである。 (1) リスクの経済学の成熟期や再生期に活躍した研究者たちの業績を文献的に調べるために、J. C. Wood & R. N. Woods (eds.)Paul A. Samuelson: Critical Assessments,Vol. I-IV, Routledge, London & New York, 1989など、英文の基本文献を1セット購入した。 (2) 本研究活動のためには、膨大な文献複写・整理作業が必要であった。この作業を円滑に進めるために、複数の短期雇用者を常時雇用した。 (3) 生活経済学研究、彦根論叢、リスク研究・ニュースレターなど、数々の学術雑誌に研究業績を発表することができた。 (4) 数々の学会・研究会・ワークショップに積極的に参加し、意見交換を行うことができた。とりわけ、The Kadota Fund International Forum 2008での招待講演(平成20年12月14日、京都国際会館)、日本リスク研究学会での学会報告(平成20年11月10日)は研究上非常に有益な会合であった。 以上を総括すると、平成20年度には、3年間に及ぶ本研究課題を推進するための最終年度として、意義ある諸々の研究・調査活動を進めることができた。ごく近い将来に、本研究活動の集大成として、単著『リスクの経済思想』(仮題、ミネルヴァ書房)を公刊する予定である。
|