平成19年度は、前年度に引き続き、L.ワルラス、エミール・シェイソン、シャルル・ジッドなどの「社会経済」理論の比較研究を進めると同時に、平成20年度以降の研究のための資料収集を行った。 理論面の研究としては、1)エミール・シェイソン、シャルル・ジッドの「社会経済」概念の比較検討を継続すると同時に、自由主義経済学者のルロワ・ボーリューおよびシェイソンよりやや後の時代のエンジニア・エコノミストであるクレマン・コルソンを加えて、人口問題と住宅政策の関連を考察した。「社会経済」の思想と実践の関連が顕著な住宅政策を取り上げることによって、政府介入の必要性が認識される一方で、それに対抗する協同組合などのアソシエーションの関与が強調されている点を明らかにできたことが研究の大きな意義といえる。研究成果は経済学史学会で報告した(学会発表2)。2)アンドレ・ゴダンとエミール・ガレという二人の企業家による企業内福祉の思想と実践の研究を通じて、企業の社会的責任の概念化の過程を明らかにした。ここでは、企業内福祉にとどまらず、企業活動そのものを企業家の社会的責任と捉える姿勢が「社会経済」の思想と強く結びついていることを明確に示すことができた。その研究成果は日仏経営史研究会で報告するとともに活字化した(論文と学会発表1)。 資料収集については、フランスで9月5日から18日にかけて、パリのフランス国立図書館および社会博物館において、実践的「社会経済」関連の資料、モンペリエおよびニームにおいて、ジッドの協同組合運動関連の資料を収集した。
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