平成20年度は、前年度に引き続き、さらにレオン・ワルラス、エミール・シェイソン、シャルル・ジッドなどの「社会経済」理論の比較研究を進めるとともに、最終年度である平成21年度のために、補完的な資料収集を行った。この資料収集については、当初フランスで行う予定であったが、時間的な制約から、小樽商科大学図書館(2009年2月26〜28日)で行った。 理論面からのアプローチに関しては、ワルラス、シェイソン、ジッド3者の「社会経済」概念の比較研究の結果、この概念の多様性と、それが多様な実践活動と深く結びついている点を確認した。また、当時の主流派であった古典派経済学との距離もそれぞれの経済学者によって異なり、その距離感が「社会経済学」の内容の相違を生み出していることが判明した。この成果は、9月11〜12日に京都大学で開催された「国際ワルラス学会」の年次大会で報告し、今後の研究に有益なコメントを受けた。 実践面からのアプローチとしては、人口問題への対応を再び研究し、フランスにおけるマルサス主義の受容と、その変容としての新マルサス主義、対抗陣営としての反マルサス主義という3つの思想潮流と「社会経済学」との関連を考察した。すでに、「社会経済学」において人口の費用便益分析と呼ぶことのできる理論内容が形成されていたことを明らかにしたが、それとマルサス評価との関連を検討するとともに、「社会経済学」からの政策提言の独自性を分析した。この研究の成果は、2009年5月30〜31日に慶応義塾大学で開催される経済学史学会大会で報告する予定である。
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