研究課題
基盤研究(C)
第一次大戦の経験にもとづき現代戦争の全体性・長期性・機動性等の特質が認識れ、いわゆる全体戦争・総力戦争の概念が定着する。総力戦争は経済的諸力の準備・動員・展開不可避とするから、戦争準備・遂行のため経済体制の構築が重要な課題となり、平時経済を対象としてきた経済学は、総力戦的な経済体制に対応した経済学的な問題を独自な課題とするようになる。本研究は戦前・戦時の日本においてこのような総力戦に関わる経済学的な取組みがいかに行われたかを課題とし、まず平時経済と戦時経済との中間における総力戦準備体制(いわゆる国防経済体制ないし準戦経済体制)の理論的・方法論的検討の状況について分析を行った。その際、とくに日中戦争直前における日満財政経済研究会(代表宮崎正義)の国防経済体制論とそれに対するG.Fischerの学説の影響、有沢広巳の総力戦準備経済論とそこにおけるH.HesseのWehrwirtschaft論の受容について重点を置いて研究を実施した。総力戦準備の経済体制の基盤は経済の組織化にあり、本研究ではこの点に注目して、経済団体組織化をめぐる議論に焦点を合わせ、経済界におけるその方法論的な検討について分析した。このような国防経済体制論と並ぶもう一つの問題は総力戦と再生産論との関係であった。本研究はこの点に関連して軍需生産ないし戦時経済と再生産論との関係をめぐる論争に注目し、とくに笠信太郎・野口八郎(守屋典郎)・有沢広巳らの見解、また縮小再生産論に関する同時代的論争を取り上げ、その具体的な内容を解明しようとした。それらの成果は別記の通りである。
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明治大学『政経論叢』 76-34
ページ: 1-36
The Revier of Economics and Political science Vol.76, No.3.4