研究課題
本年度は、制限従属変数の動学モデルを中心に研究を実施した。パネルデータの分析モデルとしてこれまで展開されてきた離散選択モデルは、対象となる選択肢が観測期間を通じて一定であるという仮定を置くものであるのに対し、本研究では外生的な変数の時間変化に伴う状態によって選択肢をスクリーニングし、選択肢が観測時間ごとに変化する新しい離散選択モデルを提案した。具体的には、消費者の選択行動に影響を与える外生変数が選択肢集合を非線形に規定し、これを閾値モデルにより2つの局面へ分解してある選択肢が選択対象となる状態を記述するモデルである。さらにこのモデルをパネルごとに異なるパラメータをもつ異質性モデルとして展開して、新しく異質性を取り入れた非線形動学離散選択モデルを展開した。またこのスクリーニング離散選択モデルの統計的推測法に関して、マルコフチェーン・モンテカルロ(MCMC)アルゴリズムを与えた。シミュレーション研究によって本アルゴリズムを評価し、優れた性能を持つこと示した。また提案モデルを用いた実証分析として、広告の閾値効果を分析した。具体的には、提案モデルをマーケティングにおける消費者のブランド選択行動を記述するモデルとして展開し、各ブランドの広告量が一定水準を上回ると考慮集合と呼ばれる選択肢集合に入り、広告量が閾値を下回ると選択肢集合から離脱するモデリングを展開した。実務家のいう広告の閾値効果の新しい構造モデリングであり、広告の役割に対して新しい定量評価を与えた。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)
マーケティング・サイエンス Vol.15
ページ: 65-81
Discussion PaperTM&ARG, Graduate School of Economics and Management. Tohoku U. No.79
ページ: 1-34