研究概要 |
本研究では効率性分析の枠組みを用いて資源配分の歪み(配分非効率)が生産性に与える影響を計測する。このような分析は従来はデータ包絡分析によって行われてきた。しかしデータ包絡分析は経済学で普通に用いる生産可能集合と必ずしも整合的ではなく、規模の(不)経済性が大域的に存在する場合、効率性を過小(大)に計測する。本研究では、わが国の一般廃棄物処理事業組合のデータを用いてこのことを示した。その結果は、第33回土木計画学研究発表会(東北大学,6月10-11日)で発表した。 これに対して、効率性の計測を確率的フロンティアで行う場合、従来のほとんどの研究は技術効率性と配分効率性を同時に計測することに成功していない。特にトランスログ型を用いて技術非効率と配分非効率を計測することは、ごく最近Kumbhakarらによって報告されているに過ぎない。本研究は今年度において、最尤法によりトランスログ型距離関数を推定し、技術非効率と配分非効率を共に計測する方法を開発した。この方法は、Kumbhakar and Wangが提唱する同種の方法に比べ、距離関数の性質を利用することでより実行が容易で確実に結果を得ることができる。この方法をわが国の電気事業のデータに適用し、その結果をNorth American ProductiVity Workshop IV(New York University, June27-30)およびAsia-Pacific Productivity Conference 2006(Seoul University, August 17-19)において発表した。 また、配分非効率の下でトランスログ型距離関数を推定するもう一つの有望な方法は、MCMC法に基づくベイズ・アブローチである。本年度はこの方法を用い、わが国の一般廃棄物処理事業組合について技術非効率のみの計測を行った。今後、配分非効率を含む場合に拡張する。
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