縮小推定量の一つに、リッジ回帰推定量がある。Ohtani(2007)では、Huang(1999)によって考察された回帰係数を個別に推定するためのリッジ回帰推定量を取り扱い、このリッジ回帰推定量のモーメントの厳密な公式が導出した。しかし、この厳密な公式は、非常に複雑で、また未知母数に依存するため、極めて取り扱い難いものであるので、推定値の精度を表す標準誤差を評価するのが極めて困難である。本研究では、Huang(1999)によって考察された回帰係数を個別に推定するためのリッジ回帰推定量に、ゼロ制約という線形制約に対する予備検定を導入して、このリッジ回帰推定量を予備検定推定量に拡張した。この予備検定リッジ回帰推定量の厳密な公式を導出したが、この厳密な公式も非常に複雑で、また未知母数に依存するため、極めて取り扱い難いものであり、推定値の精度を表す標準誤差を評価するのが極めて困難である。本研究では、ブートストラップ法を利用して個別回帰係数の予備検定リッジ回帰推定量の精度を推定する手順を考察した。モンテカルロ実験の結果は、ブートストラップ法によって推定された個別回帰係数の予備検定リッジ回帰推定量の精度は、かなり正確であることを示している。 一般に、予備検定推定量のモーメントを表す厳密な公式は、非常に複雑で、また未知母数に依存するため、極めて取り扱い難いものであるので、推定値の精度を表す標準誤差を評価するのが極めて困難である。この困難さはブートストラップ法を使うことによって回避され、ブートストラップ法によって推定された個別回帰係数の予備検定リッジ回帰推定量の精度は実用に耐え得るものであることを示したことは、意義のあることである。
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