平成18、19年度は、縮小推定量の一つであるHuang (1999) によって提唱された、回帰係数を個別に推定するリッジ回帰推定量と線形制約に対する予備検定リッジ回帰推定量を取り扱い、これらの推定量のモーメントを表す厳密な公式を導出し、ブートストラップ法によってこれらの推定量のモーメントを推定する方法を考察した。 経済の実証研究で回帰分析を行う場合、しばしば回帰係数に対して不等式制約が課されることがある(例えば、所得弾力性の非負条件)。本年度は、線形制約よりも一般的な不等式制約を考え、この不等式制約が課されたときの回帰係数を個別に推定する縮小推定量(リッジ回帰推定量)を取り扱い、この不等式制約付リッジ回帰推定量のモーメントの厳密な公式を導出した。この公式も非常に複雑で、かつ未知母数に依存するので、ブートストラップ法によってこれらの推定量のモーメントを推定する方法を示した。厳密な公式に基づいてモーメントの値を数値計算で求め、モンテカルロ実験によって生成されたモーメントのブートストラップ推定値と比較することによってブートストラップ法による推定値の精度を調べた。その結果は、不等式制約が成立するときにはブートストラップ法によってある程度正確にモーメントを推定することができるが、不等式制約が成立しないときには推定精度は良くないことを示している。
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