研究概要 |
本研究の目的は、第1にEUとCEEC(中東欧)との間に急速に進展している国際ネットワーク型生産の現状を研究することであり、第2に、90年代に直接投資をテコに急速に発展したアイルランドをCEECのモデルにして、直接投資による経済成長の可能性を検討することである。今年度の本研究の重点は第1の目的に中心をおいた。 90年代前半期にCEECへの直接投資の中心はハンガリーが代表してきたが、後半以降、チャコ・ポーランドなどへの直接投資が拡大してきた。業種的にも、金融などの非製造業から自動車・電気などの製造業に変化してきている。直接投資の担い手も、EU諸国、アメリカ、日本、アジア諸国と多様化している。EU地域に広がる複数の生産拠点を結び、国際的なネットワーク型生産が、昨今では一般化している。これは、市場統合により国民経済化している90年代のEU経済を基礎に、CEECとの自由貿易協定である欧州協定、中欧自由貿易協定、EUへの加盟の展望をふまえて、EU産業企業が国際ネットワーク型生産を展開しているからである。こうしたことを背景に、EUとCEECの貿易関係の急増、直接投資の出し手国の成長動向と関連させ検討を開始している。さらに、EU,米国、日本の多国籍企業の国際ネットワーク型生産あるいは汎ヨーロッパ戦略の実情を把握するために、ベルギー、オランダ、ドイツでの調査を実施した。ベルギーでは、経済全般・環境政策と産業企業の関係、オランダでは物流ネットワークの構築との関係、ドイツではベルリン地区でのIT産業の概括的な動向を調査検討した。今後、EU、米国、日本、アジアの多国籍企業による汎ヨーロッパ戦略の実情と貿易データを踏まえて、国際ネットワーク型生産の詳細を明らかにする予定である。
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