本研究の目的は、第1にEUと中東欧諸国(CEEC)との間に急速に進展している国際ネットワーク型生産の現状を研究すること、第2に、国際ネットワーク型生産を基盤となる直接投資が中東欧諸国の経済成長の動力になっていることを90年代に直接投資をテコに急速に発展したアイルランドと比較の下に検討することである。研究の第2年度に当たるが、前年度同様に本研究の重点は第1の目的に中心をおいた。 90年代前半期に中東欧諸国への直接投資の中心はハンガリーが代表してきたが、後半以降、チャコ・ポーランドなどへの直接投資が拡大してきた。業種的にも、金融などの非製造業から自動車・電気などの製造業に変化してきている。直接投資の担い手も、EU諸国、アメリカ、日本、アジア諸国と多様化している。90年代以降に市場経済化してきた中東欧諸国に対し、93年の欧州協定以来、EUが市場開放し、04年に中東欧諸国へ拡大することで、いわば国民経済の拡大を図ったことを背景に、EU産業企業が直接投資により国際ネットワーク型生産を展開したことに関係する。 EUと中東欧諸国の貿易数量の拡大や投資動向と経済成長の連関をこれまで検討してきた。日欧米多国籍企業の国際ネットワーク型生産の実情の一端を検討するために海外調査を実行した。ベルギーではEUのマクロ経済的実態の把握に努め、ドイツにおいてはドイツ自動車メーカーの生産の有り様を実見し、チェコにおいては日系自動車部品メーカーの供給のあり方を調査し、国際ネットワーク型生産の実情を把握した 今後は直接投資・経済成長のマクロ的関係を把握し、その下での国際ネットワーク型生産の実態を明らかにする。
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