研究概要 |
以下の二つの分野で研究を行った。 1.研究開発に参加する企業数が増大することの一つの帰結は、企業間の研究開発の成果の相互利用が進まないと、研究開発の成果の商業化はより困難となることである。これは「特許の藪」という問題であるとされている。特許の藪がどの程度研究開発や特許取得の収益性を阻害しているかを、実証的に研究した。その結果、特許の藪が重要な産業(クロスライセンス比率でこれを評価した)では、特許取得性向は高いが、そのような産業で研究開発や特許取得の収益性が有意に低下する傾向はないことが見出された。クロスライセンスなどによって特許の相互利用がかなり効果的に行われていることを示唆している。研究成果は、フランスのストラスブルグで開催された国際応用経済学会の国際コンフェレンス(Patent & Innovation,Econometric Studies, Strasbourg, June 28-29,2007)において、招待講演の中で報告した。 2.研究開発は往々にして累積的であり、先行企業の発明をベースに次の研究開発が行われる場合も多い。このような過程を円滑化するために、日本と某米では特許法に試験研究例外の規定がある。本研究ではその効果を、研究開発の累積過程が、パイオニアとフォロワーの関係にある場合と、恒久的なイノベーション競争モデルが当てはまる場合とにおいて、分析を行った。研究成果は、ハンガリーのブダペストで開催された欧州計量経済学会のコンフェレンス(レフェリー付き)の法と経済のセッションで報告した。
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