研究概要 |
1.協力・非協力混成型ゲームモデル構築の一環として,貿易自由化をめぐる政府・企業間の交渉問題に関するゲームモデルを構築して分析を行った。政府と企業による共同行動は許容されないが両者間のコミュニケーションは可能であるとの想定の下で,外部安定性・定常性・最小性・非空性を満たす解が一意に存在し,しかもそれは(交渉のどの時点から先を見ても)社会的最適状態を達成することを示した。この解は,従来型の解概念である部分ゲーム完全均衡を精緻化するものでもある(研究成果〔雑誌論文〕中西2007参照)。 2.1資源保有国・2漁業国の間で行われる資源国の排他的経済水域への入漁権獲交渉に関するモデル分析を行った(これは,資源国であるパプアニューギニアと漁業国である日本,米国,フィリピン,台湾との交渉を具体事例とする)。モデルは2段階ゲームであり,第1段階では入漁権獲得交渉が行われ,第2段階で漁業国による漁獲競争が行われる。決定された入漁料水準によって,2漁業国が共に入漁権を獲得する均衡とどちらか一方の漁業国のみが入漁権を獲得する均衡という複数均衡の生じる可能性が示された(研究成果〔雑誌論文〕柴田2007参照)。 3.実際の漁業関連の国際交渉に関して文献による事例調査を行った。大洋州諸国と日本との漁業交渉,大洋州諸国と米国との漁業交渉がそれぞれ全く異なる形式で実行されていることが判明した。すなわち,前者においては日本と大洋州の各国が個別に双務的交渉を行うのに対して,後者においては大洋州諸国が全体を統括するフォーラムを形成し,そのフォーラムが大洋州諸国を代表して米国との交渉を一括して執り行うというものである。さらに,これらの異なる交渉プロトコルが交渉に臨む各国の経済厚生にどのような影響を及ぼすのかについて,交渉ゲームモデルを構築して理論的な観点から比較検討を行った(検討継続中:論文は未公刊)。
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