本年度は論文等による成果に到る前段階としての文献収集とサーベイ、ならびに企業や若者への聴き取り調査、そして地域の諸公的機関における講演、提言などを行なってきた。 講演としては、平成19年2月22日に催された山口地域労使就職支援機構(構成団体:山口県経営者協会・連合山口等)主催の「若年労働者の職場定着研修会」における講演「データからみる最近の若者の虚像と実像-キャリア形成論によせて」、ならびに本年度9月14日に催された防府市勤労青少年ホーム運営審議会における講話が挙げられる。共に科研費におけるテーマと重なり、日本における若者の就業実情を統計資料などに基づいて、地域市民にわかりやすく説明したものである。さらに、本年度11月8日には、山口県労働審議会雇用福祉部会部会長として、県知事に対して「少子高齢化における(若年)男女の仕事と家庭の両立支援」という建議を行なった。これは主に若年の非正規雇用が少子化を招いているという視点から、ワークライフバランスの重要性と対策を提言したものであり、これも科研費におけるテーマに沿った内容といえよう。 調査としては、3月に英国とドイツへ赴き資料収集と研究者との交流を行なったことが特筆に価する。英国はNEET研究発祥の地であるが、英国においてこの問題は少数民族や下層階級における、Social Exclusionの問題として把握されていることを認識した。また現在、フリーター対発として日本版デュアル・システムなるものが取り入れられているが、本場ドイツにおけるそれはOJT(実務訓練)とOffJT(研修)の制度化された統合であることを垣間見た。このような国際的な視点から比較研究することが、地域研究をも芳醇化するものと確信している。このような実績を積んで、来年度以降の成果発表に結び付けていく所存である。
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