本年度は、地域における若年雇用問題に関する研究として、ニート・フリーターを巡るサーベイ、その現状、政府の対策の概要、テーマと関する限りでの国際比較、アンケート調査などをまとめていった。とりわけ山口県における状況を徹底的に解明すべく、県下の全高校ならびに看護・福祉を除く専門学校にアンケート用紙を送付し、分析を進めた。政府の対策としては、地域若者サポートステーションや日本版デュアル・システムなどに焦点を当てて、地域と都市との比較を管轄の都県・市区・省庁等にまで聴き取り調査を行なった。一つ判明したことを挙げれば、山口県においては高卒レベルではニート・フリーターの問題はそれほど深刻ではなく、これは恐らく全国的にもある程度当てはまると思われるということである。また、キャリア(形成)教育に関しても、政策と現場の間でギャップがあり、正す必要がある。 また国際比較においては、オランダに赴き、政労使のネオ・コーポラティズムによる多様就業型ワークシェアリング、即ちここでは、正社員と非正社員の相互転換制度が日本の若年雇用対策に応用できるかという視座で探ったが、オランダにおいては非正規雇用として入職してから正社員になるのであって、日本の非正社員のように一部分が身分的差別を受けているというのとは極めて異質であることが判明した。これはオランダが実は元来米国的な流動的な市場であるところに、解雇規制を強めたことの結果であると考えられる。オランダ・モデルを日本に適用させようという理想論があるが、上記のような根本的な相違があるのであり、この点を踏まえなければならないと思われる。/本年度、山口県地域の全高校の進路指導の先生方と意見交換しうる契機を作り、さらに国際的な観点から対策を考察しうる視座も磨かれたと自負したい。今後も研究を追究していきたい。
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