今年度の研究では、昨年度に引き続き、中東欧地域に生産拠点を築いている日系電気機械企業に関して、西欧の既存生産拠点と中東欧の新規生産拠点が、どのような役割分担・分業関係を形成しているか、またこの役割分担・分業関係がどのように変化してきているか、について検討した。なお研究の一環として、2007年8月下旬〜9月上旬に、中東欧地域の日系企業生産拠点等の現地調査を行った(チェコ5ヵ所、スロバキア1ヵ所、ハンガリー3ヵ所、オーストリア1ヵ所)。 日本企業の西欧拠点と中東欧拠点との分業関係は、水平的分業関係(西欧拠点と中東欧拠点で異なる製品を生産)と、垂直的分業関係(一つの製品のある生産工程を西欧で別の生産工程を中東欧で実施)の2つのタイプに分かれる。今年度の研究では、これらの分業関係の実態と変化状況を、現地企業調査を行いつつ、詳細に検討した。前者の水平的分業関係については、日系企業の多くが、生産拠点を次第に中東欧に移転しつつあること、しかしその一方で西欧拠点を完全に閉鎖するのではなく西欧拠点には研究開発機能・販売機能などの役割を与え、新たな形での拡大EU内部での企業内ネットワークを形成しつつあった。また、後者の垂直分業については、やはり多くの日本企業が、生産拠点を中東欧に移転しつつも、中東欧拠点が西欧拠点での生産をバックアップすることで西欧拠点を強化補強するといった分業関係の深化を見せるなど、多様な分業関係を形成しつつあった。いずれのタイプの分業においても、日本企業は、拡大EU域内において、各拠点の役割分担を動態的に変化させながら、新たな企業内地域ネットワークを創出しつつあった。
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