今日の自動車企業は、製品市場のグローバル化により、以前にもまして激しい価格競争と品質競争に巻き込まれている。本研究では、そのことが同産業の研究開発部門の仕事と管理の枠組みを大きく変えつつあることを明らかにした。具体的には、(1)研究開発期間の大幅な短縮と、(2)車両の製造コストの低減を開発部門が企画し推進することを開発部門が求められ、それが開発技術者の仕事をより細分化させ個別化させる((1)により)、と同時に、開発部門と製造部門とのコミュニケーションおよび技術者同士の連携と意思疎通をより必要なものとさせている((2)により)。そして、後者の傾向(連携の必要性)が開発部門から製造部門に至る職場内のマネジメントと技術者・技能者とのコミュニケーションの必要性をより大きくさせ、それが職場の労使関係にも新たな側面をもたらすことになっている。 とくに製品のコスト管理と品質管理の実質化の面で、労使協議や労使懇談が果たす役割が無視できないようになっている。そのことが労働組合の性格と役割に変化をもたらしている。したがって、今日無力化し経済活動のなかにおいて活動基盤を決定的に喪失しつつあると見られることの多い労働組合の活動の再生の基盤を、コストと品質の管理をめぐる労使協議・懇談の役割に見出すことが可能になっているという結論を得た。 以上の見解は、自動車産業の研究開発部門の仕事、管理、労使関係を対象として実態調査したがゆえに得られた成果である。
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