本研究の目的は、地域間人口移動は地域の観点からは経済力の移転であり、その経済力移転が地域間経済力格差を生じさせる極めて重要な要因であるとの基本的認識に基づいて、地域間再分配政策の根拠を地域間経済力移転への正当な代償であるという点に求めた上で、現在日本のデータに即して、その移転額を実証的数量的に推計することである。 そのため、初年度(平成18年度)は研究計画のうち「研究枠組みの構築」を終え、2年目(平成19年度)は、それに基づいて、都道府県間人口移動のうち、大学・短大など就学に伴う人口移動について、その人口移動数と所得移転額を推計した。本研究は就学に伴う人口移動だけではなく、すべての人口移動を対象としているが、平成19年度にまず就学に伴う人口移動について推計したのは、そのデータがしっかりしており、しかもそれに伴う所得移転も資料的に信頼できるものがあるにもかかわらず現在まで行われてこなかったので、これを推計し、後述の研究成果に示したように、学会発表及び査読済み学術論文として公表した。次年度(平成20年度)は就学を含む全人口移動について推計を行う予定であるが、本年度はその1つのひな形の推計を行った。 その結果、次の知見を得た。大学・短大への就学に伴う都道府県間人口移動と仕送金送付額・受領額・純受領額を数量的に明らかにすることができた。また、その実態に基づいて、大学・短大就学は絶対額においても、また県人口や県民所得に比しても、多大な無視し得ない大きさの地域間人口移動と所得移転を生じさせていること、さらに、その人口移動や所得移転は地方の小都市・町村部から都市部とくに東京圏への移動あるいは移転であることを示した。
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