本研究の目的は、地域間人口移動は地域の観点からは経済力の移転であり、その経済力移転が地域間経済力格差を生じさせる極めて重要な要因であるとの基本的認識に基づいて、地域間再分配政策の根拠を地域間経済力移転への正当な代償であるという点に求めた上で、現在日本のデータに即して、その移転額を実証的数量的に推計することである。 平成19年度は、「大学等への就学に伴う人口移動と所得移転額」を推計したが、平成20年度の実施計画は、これを発展させて全人口移動について「平成7〜12年の都道府県間人口移動の推計」を完成させ、それに伴う所得移転を推計することであった。 この計画は、主として以下の雑誌論文「地域間人口移動と経済力移動」として結実させた。そこでは、昨年度までの成果の上に、新たに、男女別・年齢階級別・地域別の人口純転入数(転入-転出)を推計し、それに、別に推計した男女別・年齢階級別・地域(都道府県)別生涯余剰(所得-消費)を乗じて、男女別・年齢階級別・地域別の生涯余剰を求め、これより各地域の生涯余剰を求めた。これによって、「地域間人口移動の、地域の生涯余剰への効果」を推計した。 本研究は、地方分権、市町村合併・道州制、国土形成計画など現在日本が直面している地域再編の課題において、とくに地域間財政調整において、重要な政策的意義を有するものであり、既に途中経過の研究会および報告会において関連する研究者より注目を浴びている。 来年度は、この成果に基づいて富および所得の地域間移転を推計し、それを地方交付税など現実の地域間経済力(所得)の再分配と比較することによって、純移転額を推計する。
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