主要な基礎データは「ステークホルダー社会における環境ガバナンス研究資料集」(全127頁)を作成して収録された。また、本年度の主要な研究成果は以下のようにまとめられる。1、八王子市の地域環境診断において、立場が異なる住民が多数の項目を同時に診断するシステム改善の研究が八王子市で収集されたデータを用いて実施された。2、企業が公表する数値データから企業のリスク管理あるいはステークホルダーへの対応を分析する指標作成のため、東証1部上場企業が発表する環壌やCSRに関する報告書を収集して、企業による環境や社会的責任行動への取組が分析された。その主要な論点は次の2点である。(1)企業の社会的責任行動を推進するための仕組みとしてのSRIの機能がモデル分析を通じて論証された。(2)日本の持続可能な企業行動の評価がGlobal Reporting Initiativeのガイドラインの対照表が明示されている44社に対して実施された。3、地域の持続可能なガバナンスを推進する条件が論じられる。まず、各都道府県の環境基本計画の全文を比較調査して、これらの計画に基づくガバナンスの実効性、整合性などを多角的に検証した。環境政策におけるPDCAのサイクルが有効に機能するためには、政策に関する目標あるいは改善の指標を明確に定めることが必要である。基本計画の入手が遅れた、千葉県と富山県を除いて、全国の都道府県の環境基本計画で使用されている数値目標2924が確認された。都道府県によって、環境基本計画の構成が異なることから、その数値目標の特徴が相互に比較可能なように、私が八王子市と共同開発した身近な環境指標「ちえっくどう」で設定された分野の分類に基づきこれらの項目の分野別の分布を作成して、環境計画改善の次の課題が確認された。この基本計画は都道府県が有する環境面や経済面の特徴を明確に反映されるのではなく、国の環境基本計画のガイドラインに沿う形で作成されている。
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