18年度は、韓国のコンテンツ産業を制作と流通の両面から調査を行った。コンテンツはメディアを通じた流通により商品となるので、コンテンツの制作を担うコンテンツ産業と、放送、配給、出版などの流通機能を担うメディア産業を合わせて研究する必要性を感じたからである。日本のコンテンツ産業はメディア産業の製作部門が独立して成立した経緯もあり、コンテンツ産業はメディア産業の資本力と販売力に依存してきたといえよう。このような産業構造の変化をまず把握するために、韓国の映像制作会社とテレビ局、映画会社などとの産業構造の調査を行った。特にデジタル化とそれによるネットワーク化によりメディアの多様化が加速しているので、どのように従来のポジションが変化してきているのかを明らかにするために、資料の収集とその分析を行った。 またコンテンツに対する消費者のニーズと企業の戦略対応について明らかにするために、韓国と日本における経済発展と消費トレンドの変化に関して、韓国・慶煕大学の朴基岸教授と共同研究を行った。90年代以降現在までに限定し、韓国の90年代の高度経済成長、経済危機、危機からの回復、その後現在までにいたる時期に、韓国の消費者はどのような消費行動を行ってきたのかを、韓国市場におけるヒット商品を分析することにより明らかにした。それとともに、特に経済危機前後の産業構造の変化と、消費者ニーズに対する企業の戦略の変化を分析した。次に、同様の分析方法をもちいて、バブル経済崩壊以降、現在に至るまでの日本の消費者の行動変化と企業の戦略対応を調査し、分析を行った。そしてこの韓国と日本における消費者行動と企業戦略を比較し、さらなる分析を行った。この朴教授との共同研究の成果の一部を、'Response of Management to the Changes in Consumer Trends and Economic Changes in Korea and Japan'というテーマで、研究論文を共同執筆し、発表を行った。 東アジアにおける持続的経済発展のためには、地域におけるサービス産業の発展、サービス取引の拡大を図る必要があり、そのためには東アジアにおいて、知的財産の保護、規制緩和など新たな制度構築に関する地域経済協力を行う必要がある。これに関連する今までの研究成果の一部をまとめて、中国・青島科技大学で開催された韓国流通学会主催の国際シンポジュームにおいて研究論文発表を行った。
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